今も空気を読めない日記 <ichigomomo’s blog>

日々自分のことしか考えていない「イリキ ひじり」の日記です。

二人三脚底なし沼

想像と違う北京。
日本人である私が道を歩いていても、強盗は来ないし、通りすがりの中国人から殴られたりしないし、どこからか石を投げられることもない。
道は舗装されていて、タクシーはぼったくらないし、街をゆく人々も、センスはともかく着古しでない服を着て楽しげに歩いている。
今の北京は、それ全体が紫禁城の中なのだ。
もしくは洛陽だ。
おそらく地方では、子供が飢えて病人が倒れ市民が苦しんでいる(新聞には書いてない)し、黄巾の乱っぽいのも起きているけれど、北京では清潔で美しく安全な毎日を人々が謳歌している。野グソが無い分ベルサイユより上等の街とすら断言できる。
私としては有難い限りだが、国として本当にこのままでいいのかな。長居しても良いのかな。私は仮住まいでよかった。

さて今日は、「無理に汚いところに行かなくても」という有識者の言葉にかえって克己心が湧いてきたので、『女人街』に行ってみることにした。

想像以上のディープダンジョンだったよ。

女人街の名のとおり、婦人物の衣類をメインに取り扱う店・・・いやあれは屋根のある露店だな。『テナント』とは言い難い。・・・がひしめいていて、店員もやるき茶屋から睡眠中までさまざま。それが談笑していたり、触りたくもないような勢いの大げんかをしていたりしてワクワク感が高まってくる。私の欲しいナポレオンジャケットはあるかな?

あった。

ちまちましたボタンがダブルで付いている細身のジャケットで、背中と肩のベルトが格好良かったのでおっちゃんに頼んで試着させてもらったら、おっちゃんは絶好調で似合うとかマックスマーラとか言ってきた。マックスマーラ
・・・なるほど、襟元のタグに「MaxMara」って書いてある。
私「多少銭?(おいくら?)」
おっちゃんは電卓をたたき、一度「450」を売ってからすぐさまCを押して「350」を打ちなおした。へぇ〜MaxMaraのジャケットが日本円で4500円かぁ。そんなわけあるかい!
しかしデザインは今年の流行を押さえているし、縫製もボタンがひとつ甘くなっていることを除けば目にあまるところはない。裏地も付いていて、ノーブランドのジャケットと思えば許容範囲内ではあったが、
旦「出して300だろ」
私「あっしもそう思うさぁ」
と電卓を叩こうとしたら
お「No,Last price.Beautiful price.MaxMara,MaxMara」
と繰り返され、こっちがOKって言っていないのに袋に詰めだした。ていうかなんべんマックスマーラて言うとんじゃ。ジャパニーズスマイルで一旦休憩しようと身を引きかけたらついに
お「おお あなた ひどいひと!これいじょうまけると わたし おおぞんします!わたしに くびつれといいますか?」
というようなことを身振り手振り&中国語でまくし立てられ、日本人の私は350元を出してしまったのだ。
中国語はビタイチ理解出来ない我々夫婦なのに、首を吊る云々を言っていることは瞬時に伝わってきた。人間ってすげぇな。

自称MaxMaraのジャケットが入ったうっすいビニール袋を抱えながら、私は思ったよ。これが本当の中国であり、私の異文化交流の第一歩であると。